月明りに揺れて

私の住む小さな村では、夏の間、野外コンサートが毎週催される。
月曜日の午後に訪れる義理の両親と夕食を摂ったあと、町の広場に一緒に聴きにでかける。

雰囲気こそ違えど、これは日本の盆踊りに似たようなものかもしれない。
米国ではもちろん七夕はない。それでも7月4日の独立記念日の花火大会を皮切りに、各地の野外コンサート、田舎のファーム・ショー(農園祭り)など、日本三大祭りのような盛大さや華やかさはないものの、過ぎ行く夏を彩る催しは数多ある。

広場の中央に設けられたガゼーボ(庭園などに設けられる休憩所)にオーケストラが収まり、好きな曲が流れると、前に設けられたダンスフロアーに自由に進み出て、社交ダンスを踊りはじめる。

内容は週替わりに、ベビー・ブーマー(団塊の世代)向けの、今ではオールディーズと呼ばれる曲を演奏するバンドや、戦中派向けスイング・バンド、映画音楽・ブロードウェィ・ミュージカルを演奏するオーケストラ、ジャズ・バンドなどなど、多岐にわたる。

西空がゆっくり暮れなずむころ、三々五々、デッキ・チェアやローン・チェアを持参して、自由に広場の芝生に陣を取り、夕べのひと時を過ごす。

私たちの前に座った二人の女性は、持参したサンドイッチやスナックを口に運び続けること20分。座る椅子からはみ出す脂肪の謎が解けた。

また、後ろのおばさんは、ペチャクチャペチャクチャ、会話がエンドレス。
「ランジェリーとジー・ストリング(T-バック)がね・・・」
業を煮やした近くの人々が一斉に「シーッ、シーッ」。
ボリュームが落ち、スイッチが切れた。

日が沈み、暗闇が広場を覆い、見上げる高い木立の合間から星がチラチラ見え隠れする。ビッグ・バンドの後ろにそびえる大木の合間から、月明かりが漏れ始める。

バンド・マスターが「次の曲はグレン・ミラー。グレン・ミラーと言えばお馴染みの・・・」。

こちらの 

バンマス自らクラリネットを咥え、前列のサックス奏者達と絶妙なアンサンブル。

グレン・ミラー・サウンドは、こぼれる淡い月明かりに溶け込んで、わたし達を優しく包みこんだ。

どうすることもできない出来事に苦しむ人たちと、いまこうやって平穏を享受する自分。
いろいろなトラブルが複雑に絡み合う世界。

ほんの一瞬、心が音楽で満たされた。
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by tanatali3 | 2011-08-25 22:21 | 雑記
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