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アイリーン

この日記を書いている今も、時おりハリケーンの “しっぽ”部分が、木々の枝を揺さぶりながら、「ゴーッ」と音をたてて吹き抜けてゆく。


日曜の午後、散歩をかねてカミさんと一緒に図書館まで本を返しに出かけた。
ハリケーン一過、昨夜からの激しい雨と突風のつめ跡がいたるところに。
大木や電柱がなぎ倒され、警察の通行止めの黄色いテープが村のそこここに張り巡らされている。

我が家にも昔から棲みついている木が何本かある。見上げるドライブウェイに覆いかぶさる枝が強風にあおられユッサユッサ。わたしの腹の二人分はあろうかという太い枝までギッシギシッときしむ。

ブルーンバーグ市長は、市に乗り入れる公共交通機関を土曜日の昼、全面停止。
通りのバス停から、地下鉄のプラットホームから、人々が消え、いまだかつて見たことのない無人のグランド・セントラル駅構内がTV画面に映し出された。

マンハッタン島は何本ものトンネルがハドソン川やイーストリバーの下を通り、地下鉄も島内を縦横無尽に走っている。
高潮・高波・洪水がひとたび構内に流れ込めば、排水能力の追いつかない状況も予想される。その対策を見込み、早めの決断だったようだ。週明け、何百万人の通勤客への影響を考えると、賢明かもしれない。


図書館への道すがら、歩道の脇を、昨夜からの大雨を大地が吐き出すように湧き水が流れている。
倒木で封鎖された道をくぐり抜け、娘の通った小学校が見える通りにさしかかったときのこと。

通りをへだてて、並木道のとある一本の木に目を奪われた。
小学校と隣の家の間隔が離れているせいか、ちょうど風通しもよく、西日を浴びるスポットになっているようだ。

その一本だけが、すこし恥ずかしげに紅く色づきはじめていた。

夏と秋の境目。
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by tanatali3 | 2011-08-29 10:11 | 雑記

月明りに揺れて

私の住む小さな村では、夏の間、野外コンサートが毎週催される。
月曜日の午後に訪れる義理の両親と夕食を摂ったあと、町の広場に一緒に聴きにでかける。

雰囲気こそ違えど、これは日本の盆踊りに似たようなものかもしれない。
米国ではもちろん七夕はない。それでも7月4日の独立記念日の花火大会を皮切りに、各地の野外コンサート、田舎のファーム・ショー(農園祭り)など、日本三大祭りのような盛大さや華やかさはないものの、過ぎ行く夏を彩る催しは数多ある。

広場の中央に設けられたガゼーボ(庭園などに設けられる休憩所)にオーケストラが収まり、好きな曲が流れると、前に設けられたダンスフロアーに自由に進み出て、社交ダンスを踊りはじめる。

内容は週替わりに、ベビー・ブーマー(団塊の世代)向けの、今ではオールディーズと呼ばれる曲を演奏するバンドや、戦中派向けスイング・バンド、映画音楽・ブロードウェィ・ミュージカルを演奏するオーケストラ、ジャズ・バンドなどなど、多岐にわたる。

西空がゆっくり暮れなずむころ、三々五々、デッキ・チェアやローン・チェアを持参して、自由に広場の芝生に陣を取り、夕べのひと時を過ごす。

私たちの前に座った二人の女性は、持参したサンドイッチやスナックを口に運び続けること20分。座る椅子からはみ出す脂肪の謎が解けた。

また、後ろのおばさんは、ペチャクチャペチャクチャ、会話がエンドレス。
「ランジェリーとジー・ストリング(T-バック)がね・・・」
業を煮やした近くの人々が一斉に「シーッ、シーッ」。
ボリュームが落ち、スイッチが切れた。

日が沈み、暗闇が広場を覆い、見上げる高い木立の合間から星がチラチラ見え隠れする。ビッグ・バンドの後ろにそびえる大木の合間から、月明かりが漏れ始める。

バンド・マスターが「次の曲はグレン・ミラー。グレン・ミラーと言えばお馴染みの・・・」。

こちらの 

バンマス自らクラリネットを咥え、前列のサックス奏者達と絶妙なアンサンブル。

グレン・ミラー・サウンドは、こぼれる淡い月明かりに溶け込んで、わたし達を優しく包みこんだ。

どうすることもできない出来事に苦しむ人たちと、いまこうやって平穏を享受する自分。
いろいろなトラブルが複雑に絡み合う世界。

ほんの一瞬、心が音楽で満たされた。
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by tanatali3 | 2011-08-25 22:21 | 雑記

祖国と娘

高速道路をぼんやり走っていた。
ゆるやかなカーブに身を委ねて、上り坂にさしかかる。
フリーウェイが中空に消え、透きとおる青空をバックに、立ち昇る入道雲の天頂が光り輝いている。

放り込んだCDから、懐かしいメロディーが流れはじめた。
青春時代に耳にしたメロディーは、思い出が滲みこんでいる。勝手にヒョコヒョコ飛び出しては、頭の中を勝手に歩き回る。

娘と交わした昨夜の会話が、突然乱入してきた。
「今年の夏は止めようよ」
「ん?」
「原発事故、収束してないし・・・。来年だっていいじゃない」

いままで、日本への帰省を嫌がったことのない娘だった。
放射線量やその範囲、ヨー素、セシューム、ベータ線とガンマ線、被爆線量など簡単に説明したが、電話越しの娘は、頑として聞く耳を持たないようだ。

娘を夏期講座に送る前夜。
「今年は、お盆明けの八月末に行こう。チケットを予約しだい連絡するから」
話を聞いた娘はいつものように楽しみにしている様子だった。
それが、大学に行って、友達と話をしてからなのだろう。放射能の心配が増幅されたようだった。

電話越しの会話が噛み合わず、もどかしい思いをした。娘は言葉に詰まり泣く寸前の様子が手に取るようにわかる。これ以上の無理強いはまずい。

日本はわたしにとっての生まれ故郷。原発事故が起きようと、戦争になろうと、祖国を愛する気持は変わらない。だが娘にとっては、第二の故郷だ。

いっぽう誰がなんと言おうと、娘は、私にとってかけがえのない、いとおしい存在だ。

いままで、自分の考えを押し付けてきた私だが、今回は娘の気持ちに寄りそいたいと思う。
無理に連れて行くのでは、せっかくの家族旅行が台無しになる。

チケットの予約の取り消しは24時間以内。
旅行代理店に予約キャンセルの電話を入れることにした。
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by tanatali3 | 2011-08-18 13:23 | 雑記